便秘外来についてお詫びしなくてはなりません。
便秘でお困りの方はぜひお読みください。

(1)
当院では便秘外来をおこなっております。
これまでもこのコラムで繰り返し書いてきましたが、便通に正解はありません。
1日4、5回が正常な人もいれば、1週間に1回が正常な人もいます。
ですから当院での便秘外来ではまず、その人にとっての正常なリズムはどれか? という診察から始まります。
とても時間と手間がかかります。

最低でも30分。

ですから時間枠を決めてさせてもらっています。
仕事の都合で6時より前には受診できない、という方も多いです。

でも6時からでは診察時間がどうしても足りません。
申し訳ありませんが、5時までに来院できる日を何とか調整していただきたいと思います。
本当にすみません。
(2016年10月19日)

(2)
便通に正解がないのと全く同じ理由で、治療に正解もありません。

ところがちまたにあふれる便秘改善法の数々はどれも「これさえ飲めばたちまち快便!」みたいな謳い文句です。
大学の偉い先生が提唱する便秘治療法もあります。
テレビの健康番組で紹介される治療法もあります。
どれも「これでみんなさっそく快便」みたいな勢いです。

すごいなあと思います。
当院でおこなうのはその人にしか通用しない治療法です。
便通によい食事も人によって全然異なります。
身体によい食事の摂り方も違います。身体によい食べ方も人それぞれです。
この世に同じ体質の人は二人といません、理想的な便通のあり方も千差万別です。

私には「あなたに最適の治療法」しか提示することができません。
「これさえ飲めばたちまち快便!」みたいな薬は、残念ですが、お出しできません。
本当にすみません。
(2016年10月21日)

(3)
便秘外来は、ここ最近の便通の状況を聞き取るところから始まります。
「一番最後にあったお通じはいつですか?」
「何日前の何時ごろでしたか?」
「それは食事の前でしたか、あとでしたか?」
「その前にお腹は痛くなりましたか?」
「便の硬さはどうでしたか? 量はどうでしたか?」
などなど、です。
便秘薬を使っている場合は、何を、いつ、どれだけ使ったかも知りたいです。
便通前後のお腹の張り具合や、すっきり感の有無も大切な情報です。
患者さん側からすると非常にわずらわしいと思います。
中には便通の状況なんか言いたくないという方もおられます。
ましてや腹部の触診などもっての外という方もおられます。
使っている便秘薬の名前もご存じない方もおられます。

以前は「自分が使っている便秘薬の名前くらい覚えておいてくれよ」と思っていました。
つまり徹底的に問診を取るという私の診察方法が標準であると思っていました。

今はちょっと考え方が違います。
便秘に対する考え方が人それぞれなのと同様に、便秘治療に対する考え方も人それぞれである、と。
便秘の治療には細かな問診と腹部の触診が必要である、というのはあくまでも私の考え方です。
他のやり方も可能性としてはあるかもしれません。

しかし申し訳ありませんが、松本胃腸科クリニックでは徹底的に問診を取るというやり方以外の方法はおこなっておりません。
黙って座れば万能薬がすっと出てくるというやり方をご希望の方についてはご希望に添えないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月24日)

(4)
当院はクリニックです。
私は医師です。
医学を信じています。
薬の恩恵を信じています。
症状を抑えて病気を治す、というのはもちろん薬の正しいあり方です。
その一方で「糖尿病だけれど、この1錠を飲めば好きなものを好きなだけ食べられる」というのも薬の恩恵の一つだと信じています。
ですから、「薬は悪」という考え方には与しません。

下剤もちゃんとした薬です。
便秘に対する様々なアプローチの中で、最も簡単で、最も安価で、最も健康上安全なのは、最適のタイミングで最適な量の下剤を使うことです。
「頑張って生活習慣を改善するから、薬なしで便秘を治したい」という相談には乗れます。
しかし「サプリメントや健康食品ならいいけれど、薬だけは絶対使いたくない」という方のご期待には添えないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月26日)

(5)
そして先に謝っておきます。

徹底的な問診と腹部の触診、それから場合によっては直腸や大腸の検査を経たあと、およそ半分の方に私はこうお伝えすることになります。
「あなたは便秘ではありません」
今までありとあらゆる薬を使い、あらゆる健康法を試し、それでも便通がなくて苦しんできたのです。
それが「便秘じゃない」なんて馬鹿にするな、と言いたくなると思います。
でも、そう結論づけざるを得ない場合があります。

どんなにいきんでも水のような便しか、それも少量しか出ず、当然すっきり感もなく、お腹はずっと張って痛い。
こういう場合、実は便が溜まって張っているのではなく、下剤の使い過ぎでお腹が苦しくなっている可能性があります。
この場合の対処はまず、下剤を減らすことと、もう一つは「便秘であるという思い込み」をやめることです。
いきなり「便秘じゃない」と言われたら誰でも戸惑ってしまうと思います。
ですが、「水のような便しか出ないのはもしかすると下剤が効き過ぎているからかもしれない」という発想はどうでしょうか。
そこを理解してくださると次の段階に取り掛かれます。
逆に言うと、そこを理解していただけないと「下剤を少しずつ減らして便の硬さと量を正常に戻していく」という治療に踏み込めません。

いろいろ診察をして、いろいろ説明をして、そして
「腸には便が残っていません。お腹が張って苦しいのは便のせいではなく、薬のせいです」
と言っても、
「でも今、現に苦しいから何か下剤を出してくれ」
という方もおられます。

「水のような便しか出ないのは薬のせいかもしれない」

その発想を絶対に受け入れたくない方は、残念ですが、当院ではあまりお役に立てないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月28日)